2024.02.15

SUS303とSUS304の成分:特性の違いを生む化学組成を徹底解説

 

ステンレス鋼の中でもSUS303とSUS304は特に用途が広い種類です。その成分には微妙な違いがあり、それが特性や用途の違いを生み出しています。本記事では、SUS303とSUS304の化学成分に焦点を当て、それぞれの特徴について詳しく解説します。これにより、ステンレス素材の選定や用途に関する理解が深まるでしょう。


1. SUS303の成分構成と特性

SUS303は、主に切削加工性を向上させるための成分が特徴です。添加される成分が複雑な加工でも対応できる特性を生み出しています。

SUS303の主な成分表

成分名 含有量 (重量%) 役割
クロム (Cr) 17.0~19.0% 耐食性を向上し、酸化を防止
ニッケル (Ni) 8.0~10.0% 耐食性や耐熱性を向上し、ステンレス特有のオーステナイト構造を形成
硫黄 (S) 0.15~0.35% 切削加工性を大幅に向上
炭素 (C) 最大 0.15% 材料の強度向上、ただし耐食性には悪影響
シリコン (Si) 最大 1.0% 耐酸化性を向上
マンガン (Mn) 最大 2.0% 溶接性と機械加工性の改善
リン (P) 最大 0.20% 溶解性の向上

 

SUS303の特性

  • 加工性: 硫黄(S)の添加により、切削加工が非常にスムーズです。特に自動旋盤による大量生産に向いています。
  • 耐食性: 硫黄の添加によって局所腐食が起こりやすいため、屋外や塩害環境では注意が必要です。
  • 用途: 機械部品、精密部品、ネジ、シャフトなど、加工性が重視される用途に最適です。

2. SUS304の成分構成と特性

SUS304は、ステンレス鋼の中で最も広く使用される種類です。その成分はシンプルでありながら、高い耐食性と強度を提供します。

SUS304の主な成分表

成分名 含有量 (重量%) 役割
クロム (Cr) 18.0~20.0% 耐食性を大幅に向上させ、酸化を防止
ニッケル (Ni) 8.0~10.5% 耐食性や耐熱性を向上させ、オーステナイト構造を安定化
炭素 (C) 最大 0.08% 強度を維持しつつ、耐食性を確保
シリコン (Si) 最大 1.0% 耐酸化性を向上
マンガン (Mn) 最大 2.0% 溶接性および機械加工性を改善
リン (P) 最大 0.045% 溶解性を改善
硫黄 (S) 最大 0.03% 切削性には寄与しない不純物として微量存在

 

SUS304の特性

  • 耐食性: クロムとニッケルのバランスにより、酸や塩分環境でも錆びにくく、屋外や食品加工環境にも対応します。
  • 加工性: SUS303よりは劣りますが、一般的な機械加工には問題ありません。
  • 用途: 食品加工機器、厨房機器、建築資材、化学工業用設備など、耐食性が重要な用途で使用されます。

3. 成分が特性に与える影響

加工性の違い

  • SUS303: 硫黄(S)の添加により、切削加工時の摩擦が軽減されます。その結果、加工時間が短縮され、工具の寿命も延びます。
  • SUS304: 硫黄が少ないため、SUS303ほどの加工性はありませんが、標準的な加工には対応可能です。

 

耐食性の違い

  • SUS303: 硫黄の存在が局所的な腐食リスクを高めます。そのため、酸性環境や塩害環境での使用には注意が必要です。
  • SUS304: クロムとニッケルの高含有量により、耐食性が非常に高く、食品加工や屋外環境でも安心して使用できます。

 

強度の違い

  • SUS303: 強度は標準レベルで、衝撃がかかる用途では慎重な設計が必要です。
  • SUS304: 強度が高く、耐久性にも優れているため、建築や自動車部品など幅広い用途に適しています。

4. 成分の違いを踏まえた適切な選び方

SUS303を選ぶべき場面

  • 切削加工性が求められる場合(機械部品、ネジ、シャフトなど)
  • 自動旋盤など大量生産が必要な場合
  • 腐食リスクが少ない屋内用途

 

SUS304を選ぶべき場面

  • 耐食性が重要な場合(食品加工機器、厨房用具、建築資材など)
  • 屋外や塩害地域での使用
  • 長期間使用される設備や部品

5. まとめ:成分理解が適切な素材選びのカギ

SUS303とSUS304の成分の違いは、用途や特性に大きな影響を与えます。

  • SUS303: 硫黄添加による優れた切削加工性が特長で、機械加工が求められる用途に最適です。
  • SUS304: クロムとニッケルのバランスによる高い耐食性と強度を持ち、食品関連や屋外用途に適しています。

 

成分理解を深めることで、製品選定時に最適なステンレス鋼を選ぶことができるでしょう。

製品選定や設計段階では、使用環境や加工条件を考慮し、最適なステンレス鋼を選ぶことが重要です。

 
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