2024.12.02

S45C材質の特性・用途・熱処理方法・硬度の徹底解説|S50Cとの比較も紹介

はじめに:S45C材質とは?

S45Cは日本工業規格(JIS G4051)で「機械構造用炭素鋼」として分類される中炭素鋼です。炭素含有量が約0.45%であり、強度、靭性、加工性のバランスが非常に優れているのが特徴です。自動車部品、シャフト、ギア、工具、構造部品など、多様な用途に活用されます。適切な熱処理を施すことで性能が向上し、機械部品に必要な耐久性や耐摩耗性を得ることができます。

 


S45C材質の基本特性と化学成分

成分名 含有量 (%) 主な役割
炭素 (C) 約0.45% 強度・硬度向上
シリコン (Si) 0.15〜0.35% 鋼材の脱酸効果
マンガン (Mn) 0.60〜0.90% 強度・延性向上
硫黄 (S) 0.035%以下 過剰含有で脆性の原因
リン (P) 0.035%以下 耐衝撃性の維持

炭素含有量が中程度(0.45%)であるため、硬度と靭性のバランスが良好で、加工性にも優れています。

S45C材質の用途

  • 自動車部品(シャフト、クランクシャフト)
  • 機械構造部品(ギア、ボルト)
  • 工具類(刃物、金型)
  • その他の負荷がかかる構造部品

S45C材質の熱処理方法とその効果

S45Cは熱処理によって機械的特性が大きく変化します。以下では代表的な熱処理方法とその硬度の目安、特性変化について解説します。

1. 焼入れ(Quenching)

  • 目的:表面硬度の向上と耐摩耗性強化
  • 加熱温度:800〜850℃
  • 冷却方法:油または水による急冷
  • 硬度範囲:HRC 50〜58(ビッカース硬さ HV 500〜700)
  • 特性:マルテンサイト化した組織により、耐摩耗性が飛躍的に向上。ただし内部応力が高まり、脆さが増すため注意が必要。

2. 焼戻し(Tempering)

  • 目的:硬度調整と靭性向上
  • 加熱温度:200〜600℃
  • 硬度範囲:HRC 25〜52(焼戻し温度に応じて変動)
焼戻し温度 (℃) 硬度範囲 (HRC) 特性
200℃ HRC 48〜52 高硬度状態を維持
400℃ HRC 38〜42 硬度と靭性のバランス
600℃ HRC 25〜30 柔軟性向上

焼戻しの重要性:焼入れのみでは材料が脆くなるため、必ず焼戻しを行い、靭性を確保します。

 


3. 焼きなまし(Annealing)

  • 目的:加工性の向上と内部応力の解消
  • 方法:高温加熱後、炉内でゆっくり冷却
  • 硬度範囲:HB 130〜180
  • 特性:材料が軟化し、切削・鍛造などの加工が容易になります。

4. 焼きならし(Normalizing)

  • 目的:内部組織の均一化、内部応力の解消
  • 方法:焼きなましより低温で加熱し、空冷
  • 硬度範囲:HB 180〜220
  • 特性:寸法精度が向上し、機械的特性が安定します。

S45CとS50Cの材質比較|選定基準と用途

項目 S45C S50C
炭素含有量 約0.45% 約0.50%
硬度 中程度 高い
耐摩耗性 良好 非常に優れる
靭性 高い やや低い
加工性 優れる やや悪い
用途 自動車部品、シャフト 金型部品、高摩耗部品

選定ポイント

  • S45Cのメリット:加工性が高く、衝撃負荷に強い用途に適しています。
  • S50Cのメリット:高硬度・耐摩耗性が求められる用途(ギア、金型)に最適です。

S45C材質を選ぶ際の注意点と活用ポイント

1. 熱処理の選択が重要

使用目的に応じて焼入れ、焼戻し、焼きなましなどを選択することで、材質特性を最適化できます。特に焼戻しは必須であり、内部応力を解消し割れ防止につなげます。

2. 腐食環境への対応

S45Cは腐食に弱いため、メッキ処理や塗装などの表面処理が必要になる場合があります。

3. 加工時の注意

焼入れ後のS45Cは硬度が高いため、専用工具や適切な加工条件設定が必要です。

4. 適切な材質選定

用途に応じてS45CまたはS50Cを選定することで、強度、硬度、加工性、耐摩耗性のバランスを最適化します。


調質処理によるS45C材質の性能向上

調質処理(焼入れ+焼戻し)は、S45C材質の機械的特性を飛躍的に向上させる方法です。

特性向上のポイント

  • 引張強度と圧縮強度の向上
  • 耐摩耗性の向上
  • 割れにくい靭性の確保

代表的な用途

  • ギア、クランクシャフト、トランスミッション部品
  • 精密機械部品や負荷の大きい産業機械部品

まとめ:用途に応じた熱処理と硬度調整でS45Cの性能を最大化

S45C材質は、強度、靭性、加工性のバランスが優れ、熱処理による性能向上が容易なため、幅広い分野で利用されています。

  • 未熱処理時の硬度:HB 150〜200
  • 焼入れ後の硬度:HRC 50〜58
  • 焼戻し後の硬度範囲:HRC 25〜52
  • 加工性向上目的の焼きなまし後:HB 130〜180

適切な熱処理方法と硬度管理により、用途に応じた最適な性能を実現できます。S45C材質の活用を検討する際は、熱処理技術の選定と硬度管理が重要なポイントとなります。

 

金属加工は、京都機械商事へお任せください。

部品調達にお困りでしたら、お気軽にお問い合わせください。

  • SHARE

PAGE TOP