2024.01.28 UP

ヘリサート(ねじインサート)の基礎知識│加工手順、図面表記、コスト削減方法を徹底解説

ねじインサート(ヘリサート)は、アルミや樹脂といった軟質材に使用されるねじ穴の補強部品として、製造業で広く利用されています。

本記事では、ねじインサートの基本的な知識から、加工方法、種類、図面表記、そしてコスト削減のための提案までを詳しく解説します。


目次

1.ねじインサート(ヘリサート)とは
①ヘリサートが必要な理由とその効果
②主な用途と業界別活用例

2.ねじインサート加工の基礎知識
①加工手順:下穴、タップ、挿入
②【コラム】ねじの基本規格と呼び方

3.ねじインサートの種類と選び方
①標準長さ「1D」「1.5D」「2D」とは
②材質による選定のポイント

4.ねじインサートの挿入方法
①タング付き vs. タングレス:どちらを選ぶべきか?

5.図面表記の注意点と具体例
①設計者が注意すべきポイント
②よくあるトラブル事例と解決策

6.ねじインサートを用いたコスト削減アイデア
①材質変更による工程削減
②加工の外注化で得られるメリット

7.よくある質問(FAQ)
①「ヘリサート」と「スプリュー」の違いとは?
②どのような場合にねじインサートが不要になるのか?

8.まとめ


1. ねじインサート(ヘリサート)とは

ねじインサートが必要な理由とその効果

ねじインサートは、主に軟質材(アルミ、樹脂など)に使用される補強部品です。ステンレス製のコイル状の部品であり、以下のような場面で活用されます:

  • 繰り返しねじを締めたり緩めたりする部品の補強
  • 強い締付力が求められる箇所の強度アップ
  • ねじ山の摩耗防止や耐久性向上

主な用途と業界別活用例

  • 自動車業界:エンジン部品、トルクが重要な箇所
  • 航空宇宙業界:軽量化のために使用されるアルミ材の補強
  • 電子機器業界:樹脂ケースの固定用ねじ補強
  • 医療機器業界:高精度が求められる小型部品の補強

2. ねじインサート加工の基礎知識

加工手順:下穴、タップ、挿入

ねじインサートを使用する際には、以下の手順を踏む必要があります:

1.下穴加工
規定サイズのドリルで下穴を開けます。一般の並目ねじ用の下穴とは異なるため、専用のドリル径を確認してください

2.ヘリサート用タップ立て
ヘリサート専用のタップを使用してねじ山を立てます。

以下は一例です:

ねじサイズ タップ下穴径(最小) 推奨ドリル径
M6×1.0 6.25 6.3
M8×1.25 8.31 8.4

3.ねじインサートの挿入
専用工具を用いてコイルを挿入します。タング付きの場合は挿入後にタングを切り取ります。

【コラム】ねじの基本規格と呼び方

ねじ表記例「M6×1.0」では、M6がねじ外径(約6mm)、1.0がピッチ(山間の距離)を示します。ピッチには「並目」と「細目」があり、細目は緩みにくく高い締付力を持つ点が特徴です。


3. ねじインサートの種類と選び方

標準長さ「1D」「1.5D」「2D」とは

ねじインサートの長さは、ねじ呼び径(D)に対する倍数で表されます:

  • 1D:ねじ呼び径と同じ長さ(例:M6の場合、6mm)
  • 1.5D:呼び径の1.5倍の長さ(例:M6の場合、9mm)
  • 2D:呼び径の2倍の長さ(例:M6の場合、12mm)

材質による選定のポイント

  • ステンレス製:耐久性が高く、広範囲の用途に適用可能。
  • ブロンズ製:電気伝導性が必要な用途に最適。
  • コーティング品:耐腐食性や摩耗性を向上。

4. ねじインサートの挿入方法

タング付き vs. タングレス:どちらを選ぶべきか?

  • タング付き:高い保持力が必要な箇所に適するが、タング切り取りが必要。
  • タングレス:切り取り不要で、狭い箇所や異物混入が許されない環境に適している。

5. 図面表記の注意点と具体例

JIS規格(JIS B0002-2)によれば、図面上での表記は以下のように記載することが推奨されています:

  • 例:「M8×1.25 INS」
    ただし、業界では「ヘリサート」という表記が広く使われるため、「1.5Dヘリサート挿入のこと」と注記することで誤解を防ぎます。

6. ねじインサートを用いたコスト削減アイデア

材質変更による工程削減
アルミ材+ヘリサートの代わりに、より硬度の高いジュラルミン材を使用することで補強不要となる場合があります。
加工の外注化で得られるメリット
外注加工では、インサート挿入、表面処理、精密検査を一括で行えるため、工数やコストを削減できます。

7. よくある質問(FAQ)

  • Q:ヘリサートとスプリューの違いは?
    A:どちらも同様の用途を持つが、形状やメーカーによって異なる特性がある。
  • Q:ねじインサートはどのような場合に不要になる?
    A:母材の硬度が十分高い場合、直接タップを立てることで補強が不要となる。

8. まとめ

ねじインサートは、軟質材におけるねじ穴の補強や耐久性向上において欠かせない部品です。
適切な加工手順や材質の選定、コスト削減案を考慮することで、より効率的な製造プロセスを構築できます。

弊社では、ねじインサートの挿入加工から精密検査まで一貫して対応可能です。

ぜひお気軽にお問い合わせください


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