表面処理とは?金属加工の表面処理の種類
表面処理とは、その名の通り金属の表面に特殊な処理を行い、機能性を向上させる手法です。
ひと口に「表面処理」といっても、めっきから塗装まで、その手法はさまざま。材料従来の弱点を補ったり、使用場所によって耐久性やデザイン性をアップさせたりと、目的や用途によって使い分けがされています。
表面処理でできることとは
自動車からスマートフォン、家電製品まで、身の回りの多くの製品に表面処理が行われています。
表面処理の種類とは
表面処理には、めっきやアルマイト、化成処理、塗装などさまざまな手法があります。
めっきとは
めっきは、金属材料の表面に「異なる種類の金属」を用いて、薄い皮膜を形成する技術です。自動車部品をはじめ、電子基板や家電部品など、さまざまな製品にめっき処理が採用されています。
めっきは主に耐食性の向上を目的としており、「防食めっき」や「防錆(ぼうせい/ぼうさび)めっき」とよばれます。さびやすい材料を保護するのに欠かせない表面処理です。めっきのなかには、見た目(美観)の向上を目的に「装飾めっき」が行われることもあります。
またその他にも、電気的特性・機械的特性・光学特性・熱的特性など、さまざまな機能性を付与する目的で、めっき処理が行われます。
めっきに使われる素材は、金・銀・銅・クロム・ニッケルなどが代表的で、これらを溶かした「めっき液」に金属材料を浸すことで、表面に皮膜を生成します。
アルマイト処理(陽極酸化処理)とは
アルマイト処理(陽極酸化処理)は、アルミニウムに酸化皮膜を人工的に生成する方法です。
アルミニウムの皮膜は非常に薄いですが、表面の硬度を高めることで、アルミニウムの弱点であるキズや摩耗に強くなり、さらに耐食性も向上します。
アルマイト処理は、「白アルマイト」「硬質アルマイト」「カラーアルマイト」に分類されます。
それぞれ特徴が異なるため、目的に応じて使い分けられています。
白アルマイトとは
一般的に行われるアルマイト処理は、アルミニウムの表面が白っぽく見えることから「白アルマイト」とよばれ、幅広いアルミ製品に採用されています。
硬質アルマイトとは
硬質アルマイトは、通常のアルマイト(白アルマイト)よりも硬度が高く、耐摩耗性に優れています。
通常のアルマイトで形成される酸化皮膜の厚さは10μmほどですが、硬質アルマイトの厚さは50μm程度と厚く、航空機や自動車など、高い耐食性や耐摩耗性、硬度が求められるアルミ製品に採用されています。
カラーアルマイトとは
アルマイト処理を行い酸化皮膜を形成した後で、染料や顔料を着色する処理を、カラーアルマイトとよびます。
カラーアルマイトは、酸化皮膜の厚さによって色の濃さを調整することができ、黒・赤・青・緑などさまざまな色を表現できます。耐食性の向上だけでなく、デザイン性が必要とされるインテリア製品などに採用されます。
化成処理とは
化成処理は、化学的な方法で皮膜を形成する方法です。
化学反応で表面状態を変化させるため、基材(金属材料)そのものにはない特性を与えることができ、耐食性の向上や塗料の密着性向上に多く利用されています。
化成処理は主に、「クロメート処理」「リン酸塩処理」「黒染め処理」「ジンケート処理」などに分類されます。
クロメート処理とは
クロメート処理は、金属の表面にクロムの酸化皮膜を形成する処理方法です。
亜鉛やアルミニウムなどの材料を、クロム酸塩をベースとした酸性溶液に浸すことで化学反応を起こします。
リン酸塩処理とは
リン酸塩処理は、皮膜の種類に応じた溶液のなかに基材(金属材料)を沈め、溶液中の金属が基材に付着することで形成されます。
皮膜の種類には、亜鉛や鉄、マンガンなどがあり、用途に応じて使い分けられています。
黒染め処理(ブルーイング)とは
黒染め処理(ブルーイング)は、高温の濃いアルカリ溶液のなかに鉄を沈めることで、四酸化三鉄の皮膜を形成する方法です。表面に耐食性のある黒い皮膜が生じることから、「黒染め」とよばれます。
ジンケート処理とは
ジンケート処理は、主にアルミニウムにめっきを行う際の前処理として行われます。
ジンケート処理では、アルミニウムの酸化皮膜を除去し、酸化皮膜が再度生成されないように亜鉛を還元します。一般的に、ジンケート処理を繰り返す「ダブルジンケート処理」が主流です。
溶射とは
溶射(ようしゃ)とは、「溶射材」とよばれる物質を加熱することで溶融・軟化させ、基材(金属材料)の表面に吹き付ける処理方法です。吹き付けられた溶射材は、基材の表面に付着し冷却され、皮膜を形成します。
溶射材は幅広く、金属や合金だけでなくサーメット、セラミックスなど、目的に応じてさまざまな皮膜を形成することができます。
塗装とは
塗装も、金属材料の表面を塗料で覆う表面処理のひとつです。
外観やデザイン性のアップだけでなく、腐食しやすい鋼材をさびから守る効果があります。めっきよりも手軽なため、特に板金加工やプレス加工後の後処理として、数多く行われています。
ここでは、よく使われる塗装方法について紹介します。
静電塗装とは
静電塗装は、静電気を利用した塗装方法で、少ない塗料でも効率よく塗装することが可能です。
静電気のクーロン力によって、ワークの裏側や端面など、塗装しにくい箇所にもムラなく塗装できるのがメリットです。
塗装効率がよく静電塗装を自動化することもできるため、大量生産などでも多く採用されています。
電着塗装とは
電着塗装は、専用の塗料が含まれた水溶液にワークを浸し、電気を流すことで塗装を行う方法です。
静電塗装とおなじく塗装効率が高いことから、自動車ボディの下塗りなどの量産に採用されており、ムラのない塗装が可能です。
一方で設備が大型になり管理もむずかしいため、導入できる企業は限られています。
また塗装の色は灰色や黒が中心で種類が少なく、切り替えの手間も大きいなど、少量の塗装には向いていません。
溶剤塗装とは
溶剤塗装は、シンナーなどの有機溶剤に塗料を混ぜて行う塗装方法です。
古くから行われている方法ですが、人体に害のある有機溶剤を使うため密閉空間での作業がむずかしく、作業の際には保護具の着用や換気設備の導入が不可欠です。
有機溶剤に混ぜる塗料の種類を工夫することで、さまざまな塗料がつくれます。コストを抑えられる点も大きなメリットです。
焼付塗装とは
焼付塗装は、塗装後に熱を加え硬化させる表面処理で、100度以上の高温で処理を行います。
下地となる塗料の種類によって、特性や処理温度が異なります。
ブラストとは
ブラストは、表面にさまざまな種類の粒子を高速で材料にぶつけることで、表面の状態を変化させる処理方法です。
ブラストの目的には、表面の仕上げや、めっきや塗装の前のクリーニング、さび落としなどがあげられます。
材料にぶつける粒子はブラスト材(投射材)とよばれ、金属やセラミック、ガラス、樹脂など多岐にわたります。また投射材の形状は、球状の粒子であるショット、多角形の粒子であるグリット、線材を細かく切断したカットワイヤー、ビーズ、パウダーなどに分類できます。
投射材の材質と形状の組み合わせは多岐にわたるため、それぞれの特徴を把握し、目的に合わせて選定することで、狙い通りの加工を実現することが可能です。
ショットブラストとは
球状の粒子であるショット(鋼球)を用いたブラスト加工を、ショットブラストとよびます。
ショットブラストは、材料の表面に付着したさびや汚れの除去、表面の梨地状の仕上げに使われます。
また、材料の強度を高めるための「ショットピーニング」も、ショットブラストのひとつです。
ショットピーニングは、ショットを高速で衝突させることで加工硬化を起こし、圧縮残留応力を与えることで、航空機や自動車部品などの耐摩耗性や疲労強度、放熱性の向上が期待できます。
サンドブラストとは
珪砂などの砂を投射材として用いたブラスト加工を、サンドブラストとよびます。
サンドブラストは、ショットブラストと比較して安価で、加工後の表面粗さを抑えられることが特徴です。
珪砂の粗さを変えることで滑らかな仕上げができるため、表面の硬度がそれほど高くない製品や、外観が重視される製品に使用されます。
まとめ
この記事では、金属加工の現場で行われている表面処理の種類と特徴について解説しました。
金属加工における表面処理は重要です。
酸化被膜形成やめっき、塗装など、さまざまな方法があります。
表面処理は耐久性や見た目に影響を与えますので、正しい方法を選びましょう。