窒化処理とは?窒化の種類や、メリット・デメリットを解説
窒化とは、金属の表面に窒素を拡散させる熱処理の一種で、主に鉄鋼材料の表面硬度を向上させ、耐摩耗性や耐疲労性を高める目的で使用されます。この処理により、表面に窒化物層が形成されます。この層は硬度が高く、摩耗や腐食に対する耐性が強いのが特徴です。
約600℃近くの温度でも軟化することがなく、耐食性も比較的良好な処理です。高周波焼入れや浸炭焼入れと違い、熱による歪みが少ない処理です。硬化層の硬度は炭素鋼でHV600程度、SKDなどの合金鋼でHV1000程度になります。
窒化の種類
ガス窒化
アンモニアガス中で500~600℃に熱して行われる窒化です。深い硬化層を形成できますが、処理時間が長いのが難点です。
- 窒化層の深さ
0.1~0.3mm程度の深い硬化層を形成します。 - 処理時間
10~数十時間程度かかります - 窒化処理に向いた鋼材
SKDやSKHなどの合金鋼
ガス軟窒化
アンモニアガスに加え、浸炭性ガスを混合させることによって、窒素と同時に炭素も拡散浸透させる窒化です。耐摩耗性と疲労強度を向上させます。
- 窒化層の深さ
0.02mm~0.008mm程度の浅い硬化層を形成します。 - 処理時間
1~3時間と短時間で処理ができます。 - ガス軟窒化処理に向いた鋼材
炭素鋼、合金鋼などに向いております。ステンレスには処理不可です。
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塩浴軟窒化(タフトライド・イソナイト)
- 塩浴中にて窒素を浸み込ませる処理です。耐摩耗性、耐かじり性を向上させる非常に歪の少ない処理です。タフトライドはドイツのデグザ社の商標ですが、塩浴軟窒化の一般的な処理名として浸透しており、タフトライド=塩浴軟窒化と捉えて問題ありません。また、イソナイトは特許の関係でタフトライドと名前が違うだけで中身は同じ処理です。
- 窒化層の深さ
0.03~0.01mm程度 - 処理時間
1~3時間と短時間で処理ができます。 - 塩浴軟窒化処理に向いた鋼材
炭素鋼、合金鋼などに向いており、ステンレスにも処理が可能です。
プラズマ窒化(イオン窒化)
窒化イオン、水素イオンの衝突作用を用いた窒化です。部分的な窒化防止が容易であり、耐摩耗性、疲労強度、耐食性が向上します。
- 窒化層の深さ
0.01mm程度 - 処理時間
1~30時間 - 塩浴軟窒化処理に向いた鋼材
SKDやSKHなどの合金鋼などに向いており、ステンレスにも処理が可能です。
窒化処理のメリット・デメリット
メリット
窒化処理は表面処理の一種です。熱処理によって素材の機能性が向上するだけではなく、表面処理によって新たな特性を付加できます。窒化処理のメリットは次のとおりです。
- 耐摩耗性の向上:硬化した表面の耐摩耗性が高まり部品の寿命が延びる
- 耐腐食性の向上:窒素の浸透により酸化・腐食への抵抗力が強化される
- 疲労強度の向上:窒化処理により負荷や衝撃への耐久性が高まる
- 潤滑性の向上:表面の潤滑性が向上するため運転効率が高まる
- 変形の予防:処理温度が低い場合は製品の変形を抑えられる
デメリット
窒化処理は専用の設備や技術を必要とし、導入にかかる初期費用やランニングコストがデメリットになる可能性があります。処理後、不要になった窒化層を除去する際に再度加工をしなければならない場合もあります。
窒化処理では後処理も含めたプロセスが重要です。
窒化処理が使用される代表的な分野
- 自動車産業(エンジン部品、歯車、クランクシャフト)
- 航空宇宙産業(タービンブレード、ベアリング)
- 工具や金型(高精度の金型、切削工具)
窒化処理は、部品の性能を大幅に向上させるため、幅広い産業分野で重要な役割を果たしています。
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