5軸加工機、3軸加工機との違いについて京都機械商事より解説
部品加工や金型加工における形状の複雑化が進展し、多品種少量生産が求められている現在、多様かつ複雑な形状を高精度に加工できる5軸加工機のニーズが高まっています。その一方で、それほど複雑な製品を製造するわけではないから、3軸制御のマシニングセンタで十分と考えている方もいるかも知れません。
それでは5軸加工機、3軸加工機との違いについて解説します。
3軸加工機で出来ることの限界
汎用フライスからマシニングセンタ・放電加工機に至るまで、全ての加工機は、直線軸X・Y・Zの3軸を使用します。その中でも3軸を同時に制御し、工具の位置決めをして加工する方法を3D加工とも呼び、立体的で複雑な形状の生成を必要とするには不可欠です。
しかしながら、斜めに穴を加工したい時や、様々な方向から加工を必要とする部品では、バイス・サーキュラーテーブルなどを用いて、都度、加工方向にワークを傾ける必要があります。
製品の形状によっては、複数回にわたって段取りをしなくてはいけません。
5軸加工とは
5軸加工はマシニングの3軸(X/Y/Z)に、「回転」と「傾斜」の2軸を加え切削加工です。
インペラ(航空機の内部プロペラ)などの航空機部品をはじめ、発電機のタービンブレードなどの、 滑らかな曲面加工 で活用されています。また加工面の多い金型の「スピード加工」にも効果を発揮します。
フライス盤やボール盤、中ぐり盤などを兼ねた3軸制御マシニングセンタをベースに5軸としたもので、高速回転させた工具を加工物に当てることで加工します。マシニングセンタとは、工具を自動的に取り替え、多種類の加工を連続的に実行できる工作機械です。
旋削機能を付加した5軸加工機もあります。通常の5軸加工機におけるC軸は、加工物を緩やかに回転させたり、工具の向きをXY面内で変えたりすることで、加工面の変更や5軸の同時制御による複雑な形状加工を可能としています。これに加え、旋削機能付きの5軸加工機では、加工物の高速回転を可能とすることで、旋盤のように回転対称の形状加工も高速に行うことができます。
3軸加工機との違い
3軸加工機との違いは、回転軸と傾斜軸を備えていることです。
3軸加工機は、工具の位置を自由に決定可能ですが、工具の向きが一定であるため、加工面を変更することはできません。そのため、複数の面を加工する場合には、加工面を変更するために加工物を取り外し、固定し直す必要があります。このような作業は、時間がかかる上、固定位置に誤差を生じさせ、精度や形状に不均一性を発生させる原因となります。
一方、5軸加工機では、工具の向きを自由に変えたり、加工物を横に傾けて回転させたりすることが可能です。そのため、加工物を固定している面を除いた全ての面を連続的に加工することができます。
5軸加工のメリット
1回の段取りで、多面加工ができる
3軸加工では、加工する面ごとに段取り(ワークの取り付け)をする必要があります。
そのためワークの位置ズレによって、加工精度が低下することがあります。
5軸加工では、1回の段取り(ワークの取り付け)で、多面の加工ができます。ワークのつかみ直しによる位置ズレがないため、加工精度の低下がありません。
また段取り時間を大幅に短縮することができます。
段差のある加工でも、みじかいツールを使うことができる
3軸加工では、ツールホルダとワークとの干渉を避けるため、ツールを長く突き出す必要があります。
そのためツールがたわみ、加工精度が低下することがありました。
5軸加工では、ツールやワークを傾けることで、みじかいツールでも加工ができます。
ツールの剛性が上がるため、安定した加工が実現します。
ツールを傾けてあてることができる
3軸加工では、ツールの先端ボールエンドミルを金属に押し付けて削ります。
刃先の先端の回転スピードはゼロに近いため、加工効率がよくありません。
5軸加工では、ツールを傾けてあてることができます。
そのためツールの性能を最大限に発揮しながら加工することができます。
5軸加工機の注意点・問題点
5軸加工には、以下のような注意点や問題点があります。
1.加工機の型によっては重量物の加工に向かない
5軸加工機の中でも、回転傾斜テーブル型は、重量物の加工に向いていません。テーブルが傾斜するタイプの5軸加工機は、重量物を乗せると傾斜軸回りに大きなトルクがかかり、傾斜角を維持できなくなることがあります。そのため、回転傾斜テーブル型の5軸加工機は、加工物の重量に注意が必要です。
2.機械の制御が難しい
多軸加工機は、一般的に軸が増えるほど制御が難しくなり、制御するためのプログラムも複雑になります。
機械や工具、加工物などの間の干渉に注意しなくてはならず、機械の可動範囲を超えてしまうオーバートラベルなどにも気をつける必要があります。
これらを事前に確認するには、CAM等のソフトウェアを活用してシミュレーションなどを行う必要があります。
3.機械剛性が低い傾向がある
工作機械で加工を行う際には、工具や機械に反作用が働きます。また、重量物を乗せれば、機械に負荷がかかります。これらに対抗する性質が剛性であり、剛性が低い工作機械では、機械が劣化したり歪んだりしてしまいます。
機械剛性は、機械が大きく重いほど高くなりますが、同時に機械の複雑性が増すほど低くなる傾向があります。そのため、5軸加工機は、より単純な工作機械に比べて剛性が低いことがあります。
まとめ
5軸加工機には、いくつかの注意点や問題点もありますが、操作性や性能は日々向上しており、今や弊社の本社が5軸加工機を導入しています。
また、切削加工をご依頼する予定の方には、高精度・高品質・短納期が期待できるので、ぜひ一度、京都機械商事へお問い合わせ頂ければ合わせて頑張って行きます。